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フロイドさん殺害警官に禁固22年判決

フロイドさん殺害警官に禁固22年判決

フロイドさん殺害警官に禁固22年判決

大学のアメフト選手だったフロイドさん

 全米はおろか、世界中に「ブラック・ライブズ・マター」(BLM=黒人の命も大切だ)運動のうねりを巻き起こすきっかけとなった白人警官の黒人殺害事件――。

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 中西部ミネソタ州へネピン郡(ミネアポリス市を含む)裁判所(ピーター・ケイヒル裁判長)は、拘束中の黒人、ジョージ・フロイドさん(当時46歳)を窒息させ、死に至らせた白人警官、デレク・ショーヴィン被告(45)に対し、禁錮22年6カ月の量刑を言い渡した。

 同州のガイドラインで通常科せられる禁固刑に10年加算したことになる。

 去る4月、同郡大陪審が同被告を第2級殺人など3つの罪状で有罪評決したのを受けた判決だ。

 ケイヒル判事は「判決は事実関係を厳格に精査した結果であり、世論の影響は受けていない」と述べた。

 しかし、同事件に対する内外の反響や人種問題が政治問題化している状況を考慮した結果であることは否定し難い。

 殺されたフロイドさんは身長198センチの元テキサスA&M大学アメフト選手(スポーツスカラシップ学生だったが中途退学)だった。

 中退後、トラック運転手クラブの守衛など仕事を転々と変えながら、新型コロナウイルス感染症パンデミックで勤め先が閉鎖され、失業。

 逮捕時には、新型コロナウイルスに感染し、陰性になったばかりだったという。

 これまでコカイン保持・運搬、窃盗、警官の職務質問拒否などで逮捕歴10回、累計30カ月服役している。子供5人と孫2人がいる。

 一方のショーヴィン被告は、メトロポリタン州立大学(ミネソタ州セントポール)を卒業後、陸軍予備役に8年間在籍、その後、ミネアポリス市警には19年間勤務していた。

 公判では、母親のカロライン・パウランティさんが涙ながらに、「善良な模範的な警察官」だったと刑の軽減を懇願した。

 同被告は、副業でフロイドさんの働いていたクラブで守衛をしていたこともあるが、面識はない。

白人警官による黒人殺害は年間1000件

 米国で白人警官に殺されるケースは年間約1000件だ。

 2005年以降、黒人殺害容疑で起訴された白人警官は10人。ショーピン被告は11人目だ。

 有罪判決を受けた元警官で最も重い懲役刑を受けたのは終身刑。一番軽いのは7年。平均は22年だ。

https://www.nytimes.com/2021/06/25/us/derek-chauvin-22-and-a-half-years-george-floyd.html

 日本では、逃げる容疑者を警官が発砲するのは極めてまれだ。撃つとしても脚を狙う。頭とか、胸を狙うことはまずない。日本で警官に射殺された人数は年間平均2人だ。

 ロサンゼルス郡警察の警官は筆者に内輪の話を暴露する。

「(米国の警官は)上半身を狙う。相手が銃を持っていれば、こちらが殺されるかもしれないからだ。捕まえるには息の根を止めるのも厭わない」

 ところが今回のケースは、容疑者は素手。すでに拘束され、手錠までかけられていた。銃殺ではない。

 現場を再現するとこうだ。

 フロイドさんは、2020年5月25日夕刻、車を降りて、サウスミネアポリス地区のコンビニエンスストアタバコを1箱買った。

 店員はフロイドさんが偽の20ドル紙幣を使ったのに気づき、返品を求めたが、拒否され、警察に通報。

 到着した警官4人は、駐車していた車の中にいたフロイドさんに、外に出るように命じ、手錠をかけた。

 当時、現場に出くわしたダニエラ・フレイザーさん(17)がこの一部始終を動画で撮っていた。これが公判では重要証拠となったのだ。

フレイザーさんはこの動画でピューリッツアー賞特別賞を受賞した)

https://www.dw.com/en/george-floyd-killing-ex-policeman-derek-chauvin-appears-in-court-charged-with-murder/a-53735230

 これがなければ、警察は「証拠不十分」「正当防衛」「公務執行妨害」で逃げ切ったに違いない。

 動画を見ると、警官4人は大男のフロイドさんをパトカーに乗せようとし、もみ合いになり、警官のリーダー格のショーヴィン被告はフロイドさんの体に体重をかけて動かないようにしている。

 勤務明けで署内にいたショーヴィン被告は、通報を受けるや希望して出動したという。

 同被告は9分44秒もの間、フロイドさんの首の後ろに膝を置き、「息ができない」(I can’t breath)「やめてくれ」(Please)と何度も懇願するフロイドさんを無視して押し続けた。

 救急車が到着した時、フロイドさんはすでにぐったりした状態で、病院に担ぎ込まれた1時間後に死亡した。これは殺人以外の何物でもない。

https://www.bbc.com/news/world-us-canada-57618356

 すでに手錠をかけられている容疑者をなぜ、これほどまで痛めつけたのか。日頃から黒人に抱いてきた偏見があったのか。

 勤務中、いつ容疑者に殺されるか分からない恐怖心からか。衝動的に首を押し続けた理由は分かっていない。同被告の深層心理は解明されてはいない。

 ショーヴィン被告は、2018年にモン族*1の女性、ケリーさん(46)と結婚している。行動を共にしていた2人の警官もモン族だ。

 ケリーさんは写真家で、「ミセス・ミネソタ」にも選ばれている。5月、正式に離婚した。

*1=1970年代ベトナム戦争の戦火を逃れてラオスから難民として移住してきたモン族の大半はミネアポリス周辺に定住。現在6万人近く居住している。モン族はベトナム戦争時に米軍の傭兵として北ベトナム軍や南ベトナム解放戦線(ベトコン)と戦った。そのため米国はモン族受け入れを義務付けている。

 モン族女性との結婚といい、モン族の同僚といい、同被告はアジア系には偏見はなさそうだ。差別・偏見は黒人だけにあったのだろうか。

https://www.pbs.org/newshour/show/what-chauvins-22-5-year-sentence-could-mean-for-changing-police-behavior

 公判はこれで終わりではない。連邦裁の大陪審は5月、ショーヴィン被告と同僚3人の元警官を公民権法違反で有罪評決しており、来年にはその量刑を決める公判が予定されている。

 公民権法違反では最高刑は死刑、終身刑の判決もありうると指摘する法律専門家もいる。

https://www.click2houston.com/news/national/2021/06/25/chauvin-could-face-decadeslong-sentence-in-floyds-death/

 これとは別に、郡裁判所は3人の元警官の第2級殺人・幇助をめぐる公判も来年3月予定している。

燎原の火のごとく広がったBLM運動

 この事件はこれまで続発していた白人警官による射殺事件に対する黒人の憤りを爆発させた。

 憤りは黒人の間だけではなく、リベラルな白人若年層の間にも燎原の火のごとく広がった。集会やデモが連日のように行われた。一部ではデモ隊は暴徒化すらした。

 筆者の住むロサンゼルス郡の中産階級層の住宅地の庭先にも「BLM」のプラカードを立てる家が何か所も見られるようになった。

 ショーピン被告を起訴したミネソタ州のキース・エリソン司法長官は判決についてこう言い放った。

「これは人種差別を打ち破る正義とは言えないが、差別撤廃に向けた責任説明をより明確に打ち出す瞬間と言っていいだろう」

 ジョー・バイデン大統領も「判決文の詳細は承知していないが、この判決は米国が大きく変わる瞬間になるだろう」と歓迎した。

 だが、本当に米国の警察は変わるのだろうか。

「のど輪締め」「資格免責」の禁止

 確かに立法府には事件直後から動きが出ている。民主党はこう主張した。

「白人警官による黒人暴行・殺害の元凶は現在の警察活動規定自体にある。抜本的な改革が必要だ。警官に対する再教育がなされない以上、各州自治体の警察予算を削減すべきだ」

 2020年6月、カレン・バス下院議員(カリフォルニア州選出)が「警察活動改革法案」(George Floyd Justice in Policing Act)を提出した。

 下院は賛成236、反対181で可決した。

 だが、上院は司法委員会段階で共和党に握りつぶされてしまった。

 これに対し、ドナルド・トランプ大統領(当時)は「警察活動の弱体化は治安秩序を悪化させるものだ」と真っ向から反対。共和党一致団結して同法案を葬ってしまった。

 2021年4月、ミネソタ州ミネアポリス州地裁の大陪審12人が全員一致してショーピン被告を有罪にするや、民主党は再び動いた。

 バス下院議員が再び包括的な警察活動改革案を上程した。下院は2月24日、これを賛成220、反対212で可決、直ちに上院に送付した。

 法案には次のような条項が盛り込まれている。

一、警官が容疑者をのど輪締めすることを禁ずる。

二、逮捕された容疑者に訴えられた警官の法的免責免除を撤廃する。

三、麻薬捜査で裁判所が警察官に出す無断家宅捜査令状を禁ずる。

四、容疑者に対するレイシャル・プロファイリング職務質問や容疑者絞り込みに人種的要素を加味すること)を禁ずる。

https://www.npr.org/sections/trial-over-killing-of-george-floyd/2021/04/21/989500468/where-efforts-to-overhaul-policing-stand-in-congress-after-chauvin-verdict

 ところが上院はというと、6月28日現在、委員会審議すら始めていない。

 少数派の共和党は当然、法案の大幅修正を要求してくる。警察は強硬なロビイストを有しており、保守派共和党議員に影響力を行使してきた。

 共和党が今回も警察組織の弱体化につながるような法案には真っ向から反対することは間違いない。

 共和党としては、法案修正できなければ、議員規則の範囲内で、フィリバスター(議事妨害)を行使して会期終了まで議事の進行を意図的・計画的に妨害し、廃案に持ち込むのは必至だ。

 民主党共和党のフィリバスターをはねつけるには議席の3分の2、つまり60議席が必要なのである。

今後の判決はケース・バイ・ケース

 今回の判決を踏まえて米国の警官による黒人に対する「暴挙」は変わるのか。

 イエール大学法科トレイシー・ミーレス教授はこう見ている。

「確かに今回裁判長が黒人サイドの声に真摯に耳を傾けたことは画期的なことだった。今後、白人警官による黒人に対する対応が変わるかどうか、それはケース・バイ・ケースだ」

「だが一つだけ言えるのは、今警官がやっているような『カーセラルアプローチ』(Carceral approach刑務所で服役者を扱うようなやり方)を直ちにやめるとは思えない」

https://www.pbs.org/newshour/show/what-chauvins-22-5-year-sentence-could-mean-for-changing-police-behavior

 主要紙の黒人ベテラン記者は筆者に吐き捨てるようにこう言う。

「米国はついこの間まで、疑いをかけられた黒人を首つりにしていた野蛮国家だ。俺などは父親に白人警官を見たら敵と思え、と教えられてきた」

「白人警官は銃を持ち、黒人を問答無用で撃ち殺せる権限を持っている。それをおいそれと放棄するはずもない。白人の大半がそうさせるはずもないよ」

 かって、日本のサムライは、庶民に無礼があれば「切り捨て御免」だった。

 白人・黒人の社会的ステータス革命(身分制度廃止)が起きない限り、サムライ(白人警官)の「切り捨て御免」メンタリティは変わりそうにない。

 米国は、「警察国家」であり続ける気がしてならない。

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禁固22年6か月の量刑を言い渡されたショーヴィン被告(6月25日、提供:代表撮影/ロイター/アフロ)

(出典 news.nicovideo.jp)

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